懐かしくて切ない宮古島の記憶と風景
ぼくたちの振り子の季節はとまらない

遠く離れた宮古島の小さな風景、出来事が
あなたの心を静かに揺さぶる
待望の連作短編集
1970年代から1980年代にかけて宮古島での記憶

 

 

本作について
一九七〇年代から一九八〇年代にかけて宮古島旧平良市で少年期から思春期を過ごした少年の記憶を、心を削るように思い出し綴った短編集である。もととなった作品は宮古島で大ベストセラーとなった『読めば宮古!』『書けば宮古!』の続編として集められたエッセイのひとつであった。
おバカでまぬけでナイーブな少年だった「ぼく」は南の街を自由に飛び回り、みんなと同じようにやがて島からとびたち未来を目指すはずだった。懐かしい記憶、悲しい記憶、間抜けな記憶、笑っちゃう記憶……。「ぼく」の身に起こった些細な、そして決定的な事件の記憶。

 

 

著者について
著者の荷川取雅樹(にかどり・まさき)氏は、1966年宮古島平良生まれ。小、中、高校生と平良市内で過ごすが、高校三年生の夏、大きな交通事故にあい半身不随となる。長期の入院、東京でのリハビリのあと宮古島に戻り療養生活となる。生活のほとんどをベッドで過ごすなか読書に目覚めてやがて小説、エッセイなど文章を書いて友人らに発表するようになる。そして2005年、琉球新報短編小説賞を「前、あり」で受賞。2014年には琉球放送RBCiラジオのファンタジー大賞を「病院鬼ごっこ」で受賞する。その後もフェイスブックなどで小説や小学校、中学校、そして高校時代の様々な記憶をエッセイと小説の間のような作品を書き綴ってきた。それらは「マクラム通りから下地線へとぐるりと」「パイナガマヒーローズ」という私家版でまとめられた。今回、失われた記憶を求めるかのように書き綴られた作品を作品を加筆し、さらに書き下ろし加えて連作短編集としてまとめたのが、『あの瞬間、ぼくは振り子の季節に入った』である。現在も半身不随のままであるが、宮古島にて執筆活動や地元宮古エフエムでパーソナリティを行っている。

 

 

 

 

 

●目次

あの瞬間、ぼくは振り子の季節に入った


 つまらないものだ。

 右腕三頭筋付近の痛みと、ろくすっぽ動かない足の硬直が緩和される間、じっと動かずにいるわずかな時間に唐突に浮かび上がってくる古い記憶などつまらないものなのだ。
 四十歳を超えて思い出すような、今まで触れられずにいた思い出など、埋もれていて然るべきもので、大した話ではない。
 ほぼそれは、一九七〇年代から一九八〇年代の初頭にかけての宮古島での記憶だった。
 まだまだいろいろな事を見過ごしてもらえた迂闊な時代、ノー天気と退屈が、我が物顔で闊歩していて、愚か者が愚か者のまま、糾弾などされることなどなく野放しにされていて─宮古島ではそういうところは今でもあまり変わってはいないかもしれないが─現代人が目眩を起こしそうなほど、ゆるゆるな迂闊な時代を、子供のぼくは宮古島で過ごした。
 ここでいう宮古島とは、世間一般がイメージする、いわゆるリゾート感溢れる、またはサトウキビ畑が広がる沖縄の離島の宮古島ではなくて、そんなものには縁がない、島の中心の中心、人口密度が異常に高く、島の全人口五万人のうち、三万人ほどが住んでいて、誰もが顔見知りってわけではないくらいの規模で、昼は自動車や簡易な荷馬車がガンガン行き交い、夜は酔っ払いが奇声をあげながらフラフラ歩き回っている狭いエリアのことである。
 こんな区画整理などまだまだ進んでいない、空が狭く、青い海も見えない猥雑な街で、小汚い子供は自由に飛び回って、こっぴどく怒られたり、ドヤされたりしながら、少年から少し大人の少年になっていった。
 そして、最終的に、迂闊な時代だといっても、それはいくらなんでも、迂闊にも程があるだろうというワナのような状況に直面するのだけど、それ以外はどこにでも転がっているような話で、つまらないものばかりなのである。
 しかし、困ったことに、このつまらない古い記憶が、ぼくの感情のどこか端の方に引っかかって、振り払っても振り払っても、しぶとく食い下がって消えようとしない。

 本当に困った。



 記憶1
  屋上の龍/地下の亀
  墓の上の子供
  琉映館3D映画事件
  素晴らしい日曜日

  
 記憶 2
  パイナガマ・ヒーロー
  心、ぽとり
  午前二時のフースバル
  小宇宙のバースデーケーキ
  世界が愛で殺される前に
  
 
 記憶 3
  マクラム通りから下地線へ、ぐるりと
  警察・ジプシー・チキンカツ
  「アミが、無免許でパクられたってよ」  
  前夜のジョン・レノン  

   
 記憶 4
  ぼくは雪を見たことがある


    あとがき

 
●著者略歴
荷川取雅樹 にかどり まさき
1966年生まれ沖縄県宮古島市(旧平良市)出身。交通事故により宮古高校を中退。長期の入院を経て、宮古島に帰郷。ほどなくして執筆活動に入る。その後、平成17年第33回琉球新報短編小説賞受賞。平成26年第1回RBCiラジオ SF・ファンタジー大賞受賞し、現在に至る。
89982-835-3s4

あの瞬間、ぼくは振り子の季節に入った
荷川取雅樹
四六判ソフトカバー  208頁
定価(1700円+税)
ISBN978-4-89982-335-3
投稿日
2018年3月20日
カテゴリ
文芸
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2018年11月12日
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