ほんとーく

2015年12月18日

ガラガラ石畳 vo.9

garakanban

 

 

 

去年、はじめて市場の冬を経験したが、寒い寒い。とにかく寒い。

 

タンカーマンカー(お向かいさん)の小書店とK商店の間口から続くスージグワァーを風が吹き抜けていく。
うー、ぶるぶる。

 

間口から見える道には陽光が降り注ぎ、暖かそうなオレンジ色に包まれているというのに、道の両脇に並ぶ植物たちは強く吹く風で激しく揺れている。
「まるで、外にいるみたいだ」と私が呟くと、「あーはっは。そうだ、そうだ。ここは外とおんなじだ」とKさんが笑う。
そこまで寒いのならストーブでも置けばいいのだが、狭くて本に囲まれているとどうしてもストーブを置く気にならない。
寒い日は歯を食いしばってカウンターで縮こまっているしかない。のだ。

 

そんなある日、Kさんが店に卓上ガスコンロを持って来た。
「あやちゃん、今日のお昼は鍋にしようねー」
えぇ!ここで?と驚くと、「昔はさ、そこ(小書店)は化粧品屋だったのよー。そこのおねーさんとよく鍋したんだよ。でも、お店が何度も変わって、なかなか一緒に鍋できる人がいなかったから。ひとりで鍋してたらバカみたいさーね」

 

お昼時間。Kさんは手際よく準備してきた野菜とだし汁を鍋に入れる。
立派な土鍋は店に置いてあるみたい。お皿とお箸とお玉も常備しているみたい。
豆腐とお肉は市場で調達。うどんも調達。
出来上がったお鍋からは湯気が立ち上り、見ているだけでも温かくなる。
「おいしー」を連発する私に、「こんな寒い日はアチコーコーだったらなんでも美味しいんだよ。お湯でもおいしい」
すっかり鍋にハマってしまった私たち。湯豆腐、もつ鍋、スンドゥブチゲ、お好み焼き(鍋じゃない)。レパートリーはどんどん増えていった。たまにはお客さんも巻き込み、冬の間中鍋パーティーは続いた。
暖かくなるころには、辛かった寒い日の店番が楽しみでしょうがなくなった。

 

 

数週間前、はじめて化粧品屋さんのおねーさんに会った。足が弱くなり、あまり家から出ることはなくなったというおねーさんは小さくて可愛らしいおばあさんだった。
「もー、最近見ないから心配していたよー。あー、元気でよかった!」
うんうんと優しく頷くおねーさん。Kさんは楽しそうに喋り続ける。子供のようにはしゃぐ彼女をはじめて見た。

 

Kさんが言う。「わたしはさー、なんにもわからないまま市場で商売はじめたから。おねーさんには本当によくしてもらったのよ。いつも助けてもらってた。頭上がらないよー」
私もだよ。私もKさんにいつも助けられてる。なんでも相談して、教えてもらって、頭が上がらない。

 

市場には親子で営む店、夫婦で営む店、兄弟姉妹で営む店がある。受け継がれてきた力。結束が固く、とても強いもの。それが、市場の核になっている。気がする。
一方、私とKさん。Kさんとおねーさん。
家族ではないけれど、脈々と繋がっていく。細いけれど、とても温かな関係。
市場のお隣さんやタンカーマンカーって不思議だ。家族ではないし、友達でもない。うまく言葉にできないのだけれど、特別な関係。その関係が市場のあらゆるところに点在している。
そうやって、市場は成り立っているのかなーと店番しながら考える年の瀬。

 

うー、ぶるぶる。

 

 

 

 

 

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宮里綾羽
沖縄県那覇市生まれ。
2014年4月から宮里小書店の副店長となり、栄町市場に座る。
市場でたくましく生きる人たちにもまれながら、日々市場の住人として成長中。
ちなみに、宮里小書店の店員は店長と副店長。

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