ほんとーく

2015年08月21日

ガラガラ石畳 vol.5

garakanban

 

 

「向かい合う2人」

 

 

栄町市場に座り始めて1年と4カ月。
それまで会社勤めしかしたことがなく、市場のことなんてひとつも知らなかった私を助けてくれたのは向かいの店主Kさんだ。
栄町市場でも唯一のタンカーマンカー(お向かいさん)の私たち。1人が留守のときは、1人が店番をしてくれる(圧倒的に私の留守が多いです。ごめんなさい)
Kさんの栄町市場歴は35年?38年?何年かね?はー、そんなに経つんだー、こわいー。とイマイチはっきりしないのですが、とにかくベテランサン。

 

小書店にはじめて座った日のことをよく覚えている。あれは風の強い春の日でした。
最初の挨拶は大きくしっかりと相手の目を見て!と意気込んだ私は、Kさんに向かい張り切って挨拶した。
「今日からよろしくお願いします。わからないことばかりですが、がんばります!」
すると、Kさんはふーんと少し頷いたかと思うとカウンターから身を乗り出して一言。
「が、ん、ば、る、な」
まさか、最初の挨拶をそんな風に返されるとは思っていなかった私。その場でぽかーんと立ち尽くしてしまった。
がんばったところでお客さんが来るの?まずは続けること!毎日座らんとー、とKさんの洗礼?が続く。
それからも、つい口を滑らせて「がんばる」と言ってしまう私に、「だーかーらー、がんばるって言うな!」とKさん。
次第に頑張る意欲もなくなり(!)、とにかく座り続けることが私の目標になったのでした。
「あやちゃん、まずは3年。休んでもいいから3年座ることだよー」

 

Kさんとは毎日色んなことを話す。家族のこと、市場のこと、過去のこと、未来のこと。明るくて裏表の全くない性格の彼女から学ぶことは会社勤めをしていたときよりよっぽど多い。
見栄を張るのはみっともない、苦しいときほど店に出る、そしたら頭が痛くても体がしんどくても忘れる、、、など。
夏は一緒に甲子園を全力で観戦するし、冬は鍋やお好み焼きを店で楽しんだ。家族でもないし、同僚とも違うし、親友でもない。でも特別で大切な人。こんな関係を築けたことに感謝したい。

 

と、ここまで書きました。
実はこれ、先日「市場の古本屋ウララ」の宇田智子さんが新刊を出したということでJ堂のトークショーで対談相手をさせていただいたときに話したエピソードなのだ。
同じ市場で古本屋をする者として、志の高さは違えど、境遇は少し似ているということで市場の話をさせていただいた。
私はもちろん、Kさんの話を中心に。

 

後日、友人が撮ってくれたVTRをKさんと一緒に観た。
「私、Kさんの話をいっぱいしたんだよー」とワクワクしながら観ていると、彼女も「あやちゃんよー。あはははー。がんばるなって言ったよね。そうそうそう」と楽しんでいる様子。
Kさんも喜んでくれたようだと満足していると、
「あやちゃんさー、全っ然お客さん見ないね。どこ見て話してるの?お客さんは目の前にいるのに。はい!また司会の人ばかり見てる。だめだこりゃ!」
私はまたひとつ、いや、ふたつKさんから学んだのだ。
目の前の客を放っておく者、市場人失格であーる。
下心ある者はKさんには認められず。

 

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宮里綾羽
沖縄県那覇市生まれ。
2014年4月から宮里小書店の副店長となり、栄町市場に座る。
市場でたくましく生きる人たちにもまれながら、日々市場の住人として成長中。
ちなみに、宮里小書店の店員は店長と副店長。

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