ほんとーく

2016年10月27日

ガラガラ石畳 vol.11

garakanban

 

 
 11月2日に『まだまだ知らない 夢の本屋ガイド』(朝日出版社)という本が出版される。日本全国のまだどこにも紹介されていない本屋を現役の書店員がガイドするという本だ。わたしもとっておきの1軒を紹介させていただいた。他の方の文章はまだ読んでいないが、全国の知られていない本屋を覗くことができるのだから楽しい本に違いない。と、他社から出版される本の紹介と宣伝はここまでにして。

 

 

 この本を宮里小書店でも販売することになった。ご存知の方もいるかも知れませんが、宮里小書店は古書店なのです。新刊はほとんど置いていない(新刊はボーダーインクだけ ♡)。
「小書店でも10冊置くことになったんだ。でも、そんなに売れるかなー」
と店番のカウンターでぼやくわたしに、向かいの店主Kさんが断言した。
「はっさ、50冊取りなさい!50冊は売れる!」
へっ?それは難しいでしょーと言うわたしに、商売人の火が点いた。
「あやちゃん、あんたは本当に商売人じゃないねぇ。市場のみんながいるでしょう?あんたいつも買い物しているのに、みんなに本を買ってもらわないわけ?あんたはなんのために市場で毎日買い物しているの!」
ごはんをつくるためだよ…と小さい声で反論してみるが彼女には届いていない。
「こういうときのためでしょ!」

 

 Kさんの熱気でムンムンした店内に「はいさ〜い」と、仲介業者のウラさんがやって来た。
「はい!ウラさん買って!」ムンムンのKさんが言う。
「え?なに?なんて?」
「かくかくしかじか、かくかくしかじか。ってことで、あやちゃんが本を出すから1冊買ってちょうだい!」
「はい、わかりましたー」
よくわかっていないだろうウラさんだが、本を予約してくれた。
 その後、鞄屋のJさんがお茶を持ってきたタイミングでゴングが鳴る。
「今度、あやちゃんが本を出すって。わたしも買いましたから!」
お茶を持ったままJさんがウンウンと頷く。
「はい、1冊売れた〜」と、Kさん。
す、すごい。なんか、わたしだけの本みたいになっている。そして、相手に考える隙を与えていないような気がしないでもない。
 いつものお客さんにも、「あやちゃんが本を出すから、1冊買わない?」
「いや、わたしはちょっとしか書いてないですからー。新刊で1,728円(税込)ですし…」
そう口を挟むわたしに向かい、お客さんは考えてみるさーと帰っていった。
「あやちゃん!ちょっとしか書いてないとか言わなくていい!高いか安いかを決めるのはお客さんだよ。いい文章書いたんでしょう?だったら、堂々としとけ。それで、読んだ人は安いと感じるかもしれないし、ちょっと高いと思うかもしれない。でも、それはあんたが決めることじゃないんだよ」
じーん。確かに、わたしは商売人に向いていない。売り方が消極的なのだ。読みたい人が読んだらいいとか、買いたい人が買えばいいんじゃないかってどこかで思ってたんだ。そんなだったら商売するんじゃないよ!ってことだよね。
 Kさんや市場の人がいつも堂々としているのは、自信のある物を売っているからだ。いい物をお客さんに届けているという商売人としての誇りだ。
「よし、わたしも売るよ!」だって、いい紹介文書いたって思うから。
しかし、わたしが意気込むほど客足はぴたりと途絶えるのであった…

 

 夕方、いつものように「夕飯の買い物いってきまーす」と店番を抜けるわたしに、Kさんの目がキランと光った。
「とぉ!今から行く店全部に売ってこい!みんな絶対買ってくれる!」だって。
はじめてのおつかいならぬ、はじめての営業だ。
 ドキドキしながら安座間(肉屋)のみゆきさんに営業すると、「持っておいで〜」とニコリ。ホッとしたー。次はコーヒー屋のpotohotoへ。「もちろん、1冊買うよ」
 千切り屋の比屋根さんは「孫にも読ませよう」と嬉しい反応。八百屋のハイサイは「ハイサイで1冊ね」これまた嬉しい。
 他にも、ウラさん(仲介業者)、謝花さん(市場の鞄屋さん)、池原さん(化粧品屋)、かのうさん(おかず屋)は2冊も買ってくれた。
 

 たどたどしい営業を笑う人はひとりもいなくて、みんな本の出版を喜んでくれた(だから、わたしの本じゃない)。
 昨日、わたしはちょっとだけ変わったと思うのだ。
 少し商売人になった。あと、市場をもっと近くに思うようになった。
「ね、だから市場はいいんだよー。市場の人は市場の人を助けてくれるし、応援するんだよー。方言ではゆいまーる(助け合い)さ」とKさんが笑う。

 

昨夜、店長(夜の市場担当)から報告があった。
「Kさん、いろんなところで予約取ってくれてるよー。栄町、すごいよなー」
本の予約数はあっという間に20冊を超えて30冊に手が届きそうだ。

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宮里綾羽
沖縄県那覇市生まれ。
2014年4月から宮里小書店の副店長となり、栄町市場に座る。
市場でたくましく生きる人たちにもまれながら、日々市場の住人として成長中。
ちなみに、宮里小書店の店員は店長と副店長。

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